2ヶ月前、娘が「TikTok始めたい!」と言った時、私の最初の反応は「ちょっと待って」でした。プライバシー関連の仕事をしている身として、「TikTokってどれくらいデータを集めてるの?」「私たちの情報、本当に安全なの?」という疑問が頭をよぎったんです。
きっとあなたも同じような心配をしているんじゃないでしょうか?
メディアでは「TikTokは危険」「データが中国に送られる」なんて見出しを目にするし、一方でTikTok側は「安全対策をしている」と言っている。結局、何が本当なのかわからない...そんな状況ですよね。
だから私は決めました。プライバシーの専門家として、60日間かけてTikTokのデータ取り扱いについて徹底的に調査してみようと。今日はその結果を、技術的な詳細は抜きにして、普通の人にもわかりやすくお話しします。
まず結論から言うと、はい、TikTokはあなたのデータを保存しています。でも、これだけ聞くと怖く感じるかもしれませんが、実際はそう単純な話じゃないんです。
TikTokは公式に「クリエイティビティや表現物はユーザー自身のものだと考えています。プライバシーについても同様です」と述べており、「コミュニティが参加する際は、情報をTikTokに託してもらっていることを理解している」としています。
基本的な情報(これは予想通り):
プロフィール情報(名前、年齢、メールアドレス)
投稿した動画とコメント
いいね、シェア、フォロー履歴
驚いたのはこちら:
位置情報、ブラウジング履歴、生体識別子も収集している
フィルターやエフェクトのための顔と声の情報も使用(ただし個人特定のためではない)
デバイス情報(機種、OS、ネットワーク情報)
アプリ使用時間とインタラクション詳細
技術的な仕様書を読んだだけじゃ、実際どうなのかわからないですよね。だから私は実際にTikTokを使いながら、データがどう扱われているか追跡してみました。
TikTokの「データのリクエスト」機能を使って、実際にどんなデータが保存されているか確認してみました。
結果: 予想以上に詳細なデータが保存されていました。でも、これって実は良いことでもあるんです。なぜなら、自分のデータを確認できるということは、透明性があるということだから。
TikTokが提供している各種プライバシー設定が、実際にデータ収集に影響するかテストしました。
発見: 設定を変更すると、確実にデータ収集のレベルが変わります。ただし、完全にゼロにはできません(アプリの基本機能に必要なため)。
最も重要な「データがどこに保存されているか」について調べました。
重要な発見: TikTokは欧州では3つのデータセンターを建設し、1億5000万人のユーザー情報を地域内に保存する計画を発表しています。つまり、データ保存場所の透明性向上に努めているということです。
私の調査では、他の主要SNSとも比較してみました。正直な結果をお伝えしますね。
データ収集量: ほぼ同じレベル 透明性: TikTokの方が最近は情報開示に積極的 コントロール: 互角
データ収集量: YouTubeの方が若干多い(検索履歴、視聴履歴の長期蓄積) セキュリティ対策: どちらも業界標準レベル
データ収集量: TikTokの方が多い(動画データのため) プライバシー設定: TikTokの方が詳細に設定可能
項目 | TikTok | YouTube | Twitter/X | |
|---|---|---|---|---|
データ収集量 | ★★★★☆ | ★★★★☆ | ★★★★★ | ★★★☆☆ |
透明性 | ★★★★☆ | ★★★☆☆ | ★★★★★ | ★★☆☆☆ |
ユーザーコントロール | ★★★★☆ | ★★★☆☆ | ★★★★☆ | ★★★☆☆ |
データ削除 | ★★★★☆ | ★★★☆☆ | ★★★★☆ | ★★★☆☆ |
セキュリティ対策 | ★★★★☆ | ★★★★☆ | ★★★★★ | ★★★☆☆ |
60日間の調査を通じて、SNSのプライバシーで重要なのは以下の点だと確信しました:
ユーザーが何のデータが収集されているか知ることができるか? TikTokのスコア: 8.5/10 - 最近大幅に改善
自分のデータをどこまでコントロールできるか? TikTokのスコア: 8/10 - 設定項目が豊富
必要以上にデータを収集していないか? TikTokのスコア: 7/10 - まだ改善余地あり
収集したデータが適切に保護されているか? TikTokのスコア: 8/10 - 業界標準以上
データを削除したい時に簡単にできるか? TikTokのスコア: 9/10 - 非常に簡単
何が良くなったか: さまざまなコントロール機能をTikTokのコミュニティに提供し、データの取り扱いについて詳細に説明するようになりました。
私の体験: 2年前と比べて、プライバシーポリシーが格段にわかりやすくなっています。技術者じゃない人でも理解できるレベルです。
何ができるか: 広告のカスタマイズ、データ共有の制限、アカウントの公開範囲設定など
実感: 設定を変更すると、実際に表示される広告の種類が変わりました。きちんと機能しています。
現状: 位置データ、ブラウジング履歴、生体識別子など、かなり広範囲のデータを収集
ただし: これは他の主要SNSとほぼ同じレベルです。TikTokだけが特別多いというわけではありません。
制限: アプリの基本機能に必要なデータは、完全には収集停止できません
代替案: 段階的にデータ収集レベルを下げることは可能です
理論はわかったけど、「で、結局どうすればいいの?」というのが本音ですよね。私が娘のTikTokアカウントにも適用している、実践的な対策をお教えします。
アカウントを非公開に設定
設定 > プライバシー > 非公開アカウント
位置情報サービスをオフ
設定 > プライバシーとセキュリティ > 位置情報サービス
広告のパーソナライゼーションを制限
設定 > プライバシー > 広告 > パーソナライズされた広告
データダウンロードで現状確認
設定からデータリクエストを実行
不要な連携アプリを削除
通知設定の最適化
検索履歴の定期削除
定期的なプライバシー設定見直し(月1回)
代替アプリとの併用検討
2025年6月19日までにByteDanceに時間が与えられ、「売却か禁止か」の法律に従うという状況ですが、これが実際のデータ保護にどう影響するかも調査しました。
アメリカ: TikTok U.S. Data Security Inc.という子会社を通じてアメリカユーザーのデータ保護
ヨーロッパ: 3つの欧州データセンターでの地域内データ保存
日本: プライバシー保護や青少年への影響に関する懸念から、一部自治体でTikTokの利用制限の動き
規制圧力により、TikTokのプライバシー対策は今後さらに強化される可能性が高いです。これはユーザーにとっては良いニュースです。
プライバシー設定を理解し、適切に設定できる人
定期的にアプリの設定を見直せる人
他のSNSも使っており、リスクを理解している人
エンターテインメント目的で、機密情報は投稿しない人
10代の子供(保護者の監督下で)
ビジネス関連の機密情報を扱う人
政府機関職員
極めて高いプライバシー要求がある人
中国政府への情報流出を絶対に避けたい人
デジタルリテラシーが低く、設定変更が困難な人
率直に言います。TikTokのデータ収集について完璧だとは言えません。でも、「他のSNSと比べて極端に危険」というのも誤解です。
私が最も評価するポイント: 最近の透明性向上への努力です。ユーザーが利用できるプライバシーとセキュリティを守るためのツールの使用方法を伝える姿勢が感じられます。
まだ心配な点: データ収集の範囲は依然として広く、地政学的なリスクも完全には払拭されていません。
私の結論: 適切なプライバシー設定をすれば、一般的な使用では許容できるリスクレベルです。ただし、機密性の高い情報は投稿しないという前提で。
この記事を読んだ後、どうするかはあなた次第です。でも、私からの提案は:
すでにTikTokを使っている場合: 今すぐプライバシー設定を確認し、上記の「レベル1対策」を実施してください。10分の投資で、大幅にプライバシーが向上します。
これからTikTokを始める場合: 最初から適切な設定で始めることをお勧めします。完璧な設定の方法は上記を参照してください。
まだ迷っている場合: 他のSNSのプライバシー設定も確認してみてください。TikTokだけが特別にリスキーではないことがわかるはずです。
プライバシーは「完全に守る」か「完全に諦める」かの二択ではありません。適切な知識と設定で、リスクをコントロールしながら楽しむことができます。
私も娘に「TikTokやってもいいよ、でもこの設定だけは必ずやってね」と言って、一緒に設定しました。完全にリスクゼロではありませんが、適切な対策をすれば十分に管理可能なレベルです。
完全な透明性のため:私はプライバシー分野で働く専門家として、TikTokから報酬を受けずにこの調査を行いました。上記はあくまで個人的な調査結果と意見であり、TikTok社の公式見解ではありません。